TOEICリスニングのPart1は問題数が少ないため、「わざわざ時間をかけて対策する必要はない」と感じる方もいるでしょう。
しかしPart1には、他のセクションと若干異なる対策が必要です。さらに近年では、急激な難化が指摘されており、もはや「満点を取れて当たり前」ではなくなりました。
そこで今回は、TOEICリスニングPart1の攻略法8選を全解説します。例題も含め、対策方法を細かく説明しておりますので、ぜひ学習の参考にしてください。
TOEICリスニング Part1の概要
TOEICのPart1は「写真描写問題」で、問題数は6問です。4つの選択肢のうち、写真を正しく描写しているものを選びます。
出題例
A:The office is being cleaned.
B:The men are shaking hands.
C:The men are applauding a presenter.
D:There are some workers near the printer.
正解は、Bの「男性がオフィスで握手を交わしている」です。
なお、出題される写真は、以下の3パターンに分けられます。
- 1人の人物が映った写真
- 2人以上の人物が映った写真
- 物や風景のみが写った写真
参考:【公式】サンプル問題 Part1|一般社団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
近年、TOEIC Part1は難化傾向にある
数年前まで、Part1は難易度がダントツで低い「サービス問題枠」でしたが、最近はかなり難化傾向にあり、まったくバカにできません。
Part1で難問に出くわすと、焦ってペースを崩してしまい、力が出し切れずに試験終了というケースも珍しくないため注意が必要です。
問題数が少ない分、配点も低いですが、良いスタートダッシュを切って2時間の試験を走り切るためにも、Part1の対策は必要不可欠といえます。
なお、Part1の正答率の目安としては、目標スコアが600点未満の方は6問中3問以上、600点以上の方は全問正解を目指しましょう!
TOEIC Part1の回答手順【4ステップ】
TOEIC Part1は、以下の基本の回答手順に沿って解きましょう。
- ディレクションの間に、すべての写真に目を通す。
- 人物や物に注目し、どんな問題が来るか想像する。
- 1問目のアナウンス(Look at the picture~.)が始まったら、鉛筆をマークAの「上空3mm」にセットする。
- 選択肢Aを聞き、正解だと思ったらAのマークにペン先を当て、以降の選択肢を聞く。Dまで聞いたうえでAで間違いなければ、そのまま塗りつぶす。Aが不正解だと思えば、ペン先をずらしていき、正解が来るのを待つ。
TOEIC Part1の8つの攻略法
Part1の概要と基本の回答手順を押さえたら、具体的な攻略法を見ていきましょう。
ディレクションは聞かなくてOK
ディレクションでは毎回同じ音声が流れるため、例題を読んだり、音声を聞いたりする必要はまったくありません。
その間にすべての写真に目を通して、ざっくりの内容を把握しておきましょう。
余裕があれば、人物の行動や、写り込んだ物の名称、位置関係など、写真の細部まで確認し、どんな問題が出るか予測までできると理想的です。
この予想が的中すると、すんごく気持ちいいんだよなぁ!
なお、かつてはスコアアップの裏ワザとして語られることもあった「ディレクションの間にリーディング Part5の問題を解くこと」は不正行為となるためNGです。
問題のパターン別のポイントを押さえる
前述のとおり、Part1の写真には3つのパターンがあります。このパターン別のポイントを押さえておくと、問題の予想ができるようになり、正答率アップにつながります。
・人物の「動作」に注目する ※コーヒーを注いでいる、など
・人物の「状態」に注目する ※手袋を着用している、など
複数人の人物の写真
・特定の人物の「動作」に注目する ※女性がカートを押している、など
・複数人に共通の「動作」に注目する ※人々が歩道を渡っている、など
・問われそうな対象物に注目する ※絵、車、花びん、など
・選択肢の文法に注意する ※現在進行形の受け身、など
類似発音のひっかけ問題に気をつける
TOEICPart1では、よく似た発音の選択肢を並べた「ひっかけ問題」が多数出題されます。
例えば、女性がコーヒーメーカーを操作している写真が出たとします。
(A) The woman is using a copy machine.
(B) The woman is wearing a beret.
(C) The man is washing a mug.
(D) The woman is standing in front of a coffee maker.
正解はD、「女性がコーヒーメーカーの前に立っている」となりますが、
発音が似ている「copy machine」と「coffee machine」を聞き間違えた結果、Aを選んでしまう方も少なからずいるでしょう。
ここまでいやらしい問題はそうそう出ないですが、類似発音のひっかけ問題は多いので必ず対策しておきましょう。
類似発音の例は、以下のとおりです。
floor(床) / flower(花)
work(働く) / walk(歩く)
low(低い)/ row(列)
hold(持つ) / fold(折りたたむ)
lock(鍵をかける)/ rock(岩)
car(車) / cart(カート)
curb(縁石) / curve(カーブ)
train(電車) / rain(雨)
closing(閉める)/ clothing(衣類)
現在進行形の受け身に注意する
初級者が最もひっかかりやすい問題といえば、やはり、「現在進行形の受け身」でしょう。
現在進行形の受け身は、「be動詞+being+過去分詞」で構成されます。意味は、「まさに今~されている最中である」となります。
例えば、「A picture is being displayed.」であれば、この写真のように、「今まさに(誰かによって)絵が飾られている最中である。」ということになります。
つまり、「人物が写っておらず、壁に絵が飾られてる様子」を写した以下のような写真では、現在進行形の受け身を選んではいけません。
(×)A picture is being displayed.
(○)A picture is on display.
(○)A picture is hanging on the wall.
原則、物は人がいないと動作できないので、物だけの写真で「現在進行形の受け身」が正答になることはありません。
このポイントを覚えておくだけでも、引っかけ問題による失点を避けられるでしょう。
動作と状態を区別する
Part1では、「動作」と「状態」の違いについてもよく問われます。
例えば、スカートを履いた女性が買い物をしている写真が出題されたとします。
A: She is putting on a skirt.
B: She is browsing in a store.
C: She is talking to a clerk.
D: She is pushing a shopping cart.
put onは「着る、身に着ける」だから、Aが正解!と思う方もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
「put on」は、「着る」という「動作」を表す句動詞であり、「着ている」という「状態」を表すものではありません。
「着ている」という状態を表すには、動詞「wear」を使用します。
つまり、「She is putting on a skirt.」は、「彼女は今まさにスカートを履いている最中である。」となりますが、
TOEICでは、こういった公序良俗に反する写真は絶対に出題されません!
ということで、正解はBの「She is browsing in a store. (彼女は店内を見て回っている)」になるわけです。
このように「動作」と「状態」を区別して、正しく意味を理解することが、TOEICでは重要です。
なお上記の名言は、大昔通っていた「資格の学校TAC」の先生がおっしゃっていたことの受け売りです。
当時、私はTOEIC未受験の初心者でしたが、この名言のおかげで、序盤でこの原則をマスターできました。
選択肢を5つに分け、消去法で回答する
ここまで紹介してきたとおり、TOEICのリスニングでは紛らわしい問題が多数出題されます。
ひっかけ問題にまんまと引っかからないために、フル活用したいのが「消去法による回答」です。
消去法による回答は一般的ですが、重要なポイントになるのは「選択肢の分類方法」です。
多くの方が「これだな」「これじゃないな」の2種類に分けて問題を解こうとしますが、
この方法では、「これだな、と思う選択肢が一つもなかった」とき、前半の選択肢の内容を完璧に思い出すこともできず、あてずっぽうで回答するしかなくなります。
これでは正答できる確率は、たったの25%です。
これ、本当によくあるんですよ!
次かな?次かな?と思って聞いてたのに、一つも正解っぽいのが出ずに問題終わっちゃった(汗)みたいな。
上記の理由から、「これだな」「これじゃないな」を、自信の度合いでさらに細分化することをおすすめします。
- 絶対これ(自信90%以上)
- 多分これかなぁ?(自信60%)
- 多分これはないよな?(自信60%)
- 絶対これはない(自信90%以上)
- よく聞き取れなかった
例えば、A~Dの選択肢のうち、(2)が2つ、(3)が1つ、(4)1つだったら、(3)(4)の選択肢を排除することで、正答確率は50%まで上がります。
(3)が1つ、(4)が2つ、(5)が1つの場合は、ちょっと怖いですが、(5)を選ぶのがよいでしょう。
選択肢のなかには、明らかに違うもの(4)が複数含まれていることが多いので、この分類に変えるだけで、自信のない問題の正答率を着実に上げられます。
他パートでもこの方法は使えるよん。
視点ずらし対策で、写真の細部まで確認する
難化が止まらない近年のPart1では、しばしばメインの被写体以外の描写が正解になる問題が出ます。
「視点ずらし問題」などと呼ばれることもあるようです。
例えば、以下の写真を見て、どんなアナウンスを想像するでしょうか?
Pedestrians are strolling on a walkway.
通行人が歩道を歩いている。
They are walking side by side.
彼らは並んで歩いている。
There are some buildings across the river.
川の向こうにいくつかの建物がある。
シンプルに考えれば、こんな感じでしょうか?
しかし、視点ずらし問題の場合は「えええ、そこかよ!」みたいな、以下のような選択肢が正解になったりします。
The railing is casting a shadow.
ガードレールが影を落としている。
The surface of a river is calm.
川の水面は穏やかである。
視点ずらしの問題は、6問中1問程度出る可能性があるので、本番でテンパらないためにも、存在だけでも覚えておきましょう。
写真にない物、読み取れない要素を含む選択肢は除外する
当然のことですが、はしごが写っていないのに「ladder」という単語が聞こえたら、その選択肢は即座に除外してください。
また、ここで注意したいのは、写真のイメージで想像を広げすぎて、写っていない対象物についての選択肢を選んでしまう、というミスです。
ちょっと例が難しいのですが、この写真で以下のような選択肢が正解になることはありません。
(×)The building is being repaired.
(×)The workers are setting up a ladder.
建物も、修理の様子も、作業中の人物も、写っていないですからね。
また、写真では語れない概念や事情について語る選択肢が正解になることもありません。
(×)She enjoys shopping after lunch.
(×)She is choosing shoes for a party.
(×)She is looking for presents for her sister.
目に明らかな事実以外を語った選択肢は、すべて即排除で問題ないでしょう!
TOEIC Part1の勉強法
TOEIC Part1の攻略法を把握したら、次に具体的な勉強方法を見ていきましょう。
頻出語彙をマスターする
TOEIC Part1によく出題される単語は、ある程度決まっています。必要な語彙を専用の単語帳などでしっかりと押さえておけば、一部の難問を除いて、回答に悩むことはほぼなくなるでしょう。
なお、頻出語彙の数は決して多くないため、数日で十分マスター可能です。
逆に、頻出単度を知らないと、感覚的な難易度は跳ね上がります。
定番の言い換え表現を押さえる
Part1に限らず、TOEICでは単語の言いかえがよく見られます。
一例は、以下のとおりです。
- car, taxi, truck, bus ⇒ vehicle(車両)
- guitar, piano ⇒ musical instrument (楽器)
- baseball, football, tennis ⇒ sports (スポーツ)
- clothes, furniture ⇒ merchandise (商品)item (品物) product(製品)
- apple, corn, potato ⇒ produce, crop(農作物)
- mobile phone, laptop ⇒ device(機器)
- microscope, projector ⇒ equipment(装置)
- scissors, hammer, drill ⇒ tool (道具)
- bag, purse, suitcase ⇒ belongings(持ち物)baggage(荷物)
- flower, grass ⇒ plants(植物)
- document, report ⇒ material (資料)
- refrigerator, microwave ⇒ appliance(電化製品)
- pan, bowl, spoon, knife ⇒ utensil(調理器具、台所用品)
- milk, cheese, yogurt ⇒ dairy(乳製品)
自分の言葉で写真を描写する練習をする
問題集などの写真を見て、自分の言葉で情景を描写する練習をすると、事前予測の精度が格段に上がります。
普通に問題を解く勉強方法と併せて、自分の頭で想像し、組み立てた英文を声に出してアウトプットしてみましょう。
The man is showing something to a customer.
The stuffs of the store are wearing an apron.
The woman is working next to the man.
The shopper is pointing at a product.
A lot of seafood is stacked on a counter.
自分の言葉で写真を正しく描写できるレベルになれば、パート1はもう怖くありません。
本番のナレーションの声に慣れる
TOEICのナレーターは毎回固定の人物が務めており、国籍はアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアです。
発音の癖やアクセントに慣れるためにも、本番の試験と同じナレーターの音声が聞ける公式問題集または過去問で訓練を積んでおきましょう。
特に、2020年頃?から新たにナレーターに加わった、甲高い声のイギリス人女性の英語がとても早口で聞き取りにくいので、しっかり慣れておくことをおすすめします。
このイギリス人女性には多くの受験者が悩まされており、近年のTOEIC難化の象徴的な存在です。
TOEIC Part1の勉強に最適な単語帳、問題集
最後に、Part1対策のために用意したい単語帳、問題集を紹介します。
出る単特急 金のフレーズ
悪いことは言わないので、金のフレーズ(通称金フレ)は絶対に勝ってください!
TOEIC頻出単度1,000語の他に、「パート1重要語100」もsupplementとして収録されており、パート1の対策は正直これだけでほとんど完了するといっても過言ではありません。
公式問題集
必要な語彙を叩き込んだら、あとは問題に慣れるだけです!
公式問題集を新しいものから順に用意して、本番の音声に耳を慣らしましょう。
2023年2月現在、最新の公式問題集は9(オレンジ)です。
ETS TOEIC 定期試験既出問題集
「公式問題集はコスパが悪いのがちょっと…」「もっとゴリゴリ問題を解きたい!」という方には、韓国で出版されている既出問題集をおすすめします!
これはなんと、日本では未発売のTOEICの過去問です。
リスニング、リーディングは別冊になりますが、10回分収録で3,450円という高コスパが魅力です。
公式問題集は、リスニング・リーディングのセット2回分で3,300円(解せぬ)
過去問は韓国で独占出版?らしいです。なんでやねん。
しかし、韓国の過去問にも落とし穴があります。
はい、勘のいい方はお気づきのとおり、解説はすべて韓国語なのです。
したがって、説明を読み込まないと正答の根拠がわからないという段階の方には、積極的におすすめはしません。
ただし、今はカメラをかざすだけでそれっぽく翻訳してくれる無料アプリもあるので、ほぼ解説不要な上級者の方や、公式問題集を解き終わってしまった方、一手間をかけることが気にならない方には、最適な選択肢かと思います。
2023年2月現在、最新の既出問題集は3です。(リーディング版もあります!)
難化傾向のTOEIC Part1も、しっかり対策すれば怖くない!
かつてはTOEICで最も易しいセクションだったPart1ですが、ここ2~3年でどんどん難しくなってきています。
Part1は、リスニング試験の100門中たった6問のみですが、このセクションでよいスタートを切れるかどうかが、テスト全体の出来をも左右します。
出題の傾向をしっかり押さえたうえで、頻出単語の習得をメインに、対策を進めていきましょう!