TOEIC リスニングPart2は、短い音声に対して適切な返答を3つの選択肢のなかから選ぶシンプルな問題です。
本記事では、Part2の6つの出題タイプとそれぞれの特徴のほか、具体的な回答手順や学習方法についてくわしく解説します。
音声を聞き逃した際に少しでも正答率を上げる裏技も紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。
TOEIC Part2の概要
TOEIC Part2は、リスニングのQ7-Q31まで、全25問の応答問題です。
問題文と選択肢は問題用紙に印刷されておらず、音声の再生も一回きりなので、集中力を保って25問を解き切る必要があります。
近年の難化傾向はPart2でも例外なく、しっかりと意味や意図を理解し、情景をイメージしないと解けないひっかけ問題や変化球の問題が増えてきました。
「TOEIC Part2」でGoogle検索をすると、「難しい」「一番難しい」「聞き取れない」「おかしい」などのサジェストが出てくることからも、Part2を特に苦手としている方が多いことがわかります。
しかし、出題される英語自体の難易度は決して高くないため、問題のパターンを覚えて対策すれば、比較的簡単に完封できるでしょう。
参考:【公式】サンプル問題Part2|一般社団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
TOEIC Part2|6つの出題タイプを全解説
TOEIC Part2では、ある程度問題のパターンが決まっています。
6つのおもな出題タイプと問題数の目安は、以下のとおりです。
出題タイプ | 出題数 |
Wh/How疑問文 | 8~13問 |
Yes/No疑問文 | 4~8問 |
平叙文 | 1~6問 |
否定疑問文 | 1~4問 |
付加疑問文 | 1~3問 |
選択疑問文 | 1~2問 |
合計 | 25問 |
どのタイプもひっかけポイントは共通しているので、怖がらず一つひとつ対策していきましょう!
5W1H疑問文
5W1H疑問文とは、その名のとおり、5W1H (When, Where, Who, What, Why, How) が先頭にくる疑問文のことです。
25問中8~13問と、Part2で最も多くを占める問題であるため、重要度は特に高いといえます。
【例題】
When will the new photocopier be delivered?
新しいコピー機はいつ届きますか?
(A)At the copy room on the 2nd floor.
(B)By 11 o’clock on Wednesday.
(C)The copy machine is large.
5W1H疑問文で最も重要なのは、疑問詞を正しく聞き取ることです。
疑問詞(when)を正しく聞きとれれば、解答は(B)「水曜日の11時までです。」であることはすぐに分かるでしょう。
しかし、「when」と「where」を聞き間違えた場合、(A)の「2階のコピー室です。」を選んで不正解になってしまうでしょう。
Yes/No疑問文
Yes/No疑問文とは、「Is this a pen?」「Do you like dogs?」のように、YESかNOで答えられる疑問文のことです。
【例題】
Is there enough space in the office?
そのオフィスに十分なスペースはありますか?
(A)It broke last week.
(B)No, Mr. Tanaka has a key.
(C)Yes, it is very spacious.
上の例題は、シンプルにYes/Noを答えるパターンで、回答は(C)「はい、とても広々しています。」となります。
しかし、以下のようなひっかけ問題もあるため注意が必要です。
【例題】
Can you update the contents of our Web site?
私たちのWebサイトの中身を更新してもらえますか?
(A)I think Masako already did that.
(B)Yes, I’ll send you an update of the project.
(C)No, the computer is mine.
「私たちのWebサイトの中身を更新してもらえますか?」という質問に対して、YesでもNoでもない、(A)「それはもうMasakoさんがやったと思います。」が正答です。
このように、Yes/No疑問文であっても、YesかNoで答えた選択肢が正答になるとは限りません。
「Yes/No疑問文はYesかNoで答えるもの」といった覚え方をしてしまうと、こういった問題にまんまと引っかかることになるので、十分に注意しましょう。
平叙文
平叙文とは、疑問文や命令文ではない、ごくシンプルなセンテンスのことを指します。
平叙文へのおもな返答方法としては、ざっくり以下の5パターンが考えられます。
反対 : I don’t think you should buy it online.
提案 : I think I can help you.
質問 : Could you drive me to the airport?
意見 : We definitely need some help.
上記の例は、それぞれ以下のような平叙文の応答になり得るかと思います。
I’m going to buy a box of chocolate for her as a retirement gift.
退職のプレゼントとして、彼女にチョコレートを買うつもりです。
That’s a good idea!
それはよい考えですね!
I have to buy a suit for a job interview.
面接のためにスーツを買わなくちゃ。
I don’t think you should buy it online.
ネットで買わない方がいいと思いますよ。
I don’t have enough time to complete the report.
レポートを終わらせる時間がありません。
I think I can help you.
私でよければお手伝いできますよ。
Trains are being suspended due to an accident.
事故で電車は運転見合わせになっています。
(Really?) Could you drive me to the airport?
空港まで車で送ってもらえませんか?
The store’s going to be busy for the next couple of months.
お店は向こう2、3ヵ月忙しくなります。
We definitely need some help.
私たちには間違いなく助けが必要です。
否定疑問文
否定疑問文とは、Don’t you〜 や Isn’t it〜のような否定の表現が文頭に来るタイプの疑問文のことです。
英語の否定疑問文への返答の仕方は、通常の疑問文への返答の仕方とまったく同じです!
出だしに否定形が来たことに面食らってしまい、上手く答えられない方も少なくないですが、文頭の否定の表現はガン無視でOKです。
【例文】
Can’t you drive? ― No, I can’t.
車の運転ができないのですか?― はい、できません。
Isn’t it a lovely day? ― Yes, it is!
今日は素敵な日じゃないですか?― はい、そうですね!
英語の否定疑問文がややこしいのは、日本語で答える場合の「はい」「いいえ」とは異なる方法で応答するからです。
以下2つの文章を例に、もう少し細かく解説します。
Do you know that? (それを知っていますか?)
Don’t you know that? (それを知らないのですか?)
【日本語の場合】
それを知っていますか?
「はい、知っています」「いいえ、知りません」
それを知らないのですか?
「いいえ、知っています」「はい、知りません」
※質問のかたちに応じて、「はい」と「いいえ」を使い分けます。
【英語の場合】
Do you know that?
「Yes, I do.」「No, I don’t.」
Don’t you know that?
「Yes, I do. 」「No, I don’t. 」
※質問の形に関わらず、自分の答えが肯定の内容なら「Yes」、否定の内容なら「No」で答えます。
こう見ると、ややこしいのはむしろ日本語だよね。
自分の答えが肯定の内容なら「Yes」、否定の内容なら「No」
文頭の否定表現はガン無視でOK!
付加疑問文
付加疑問文とは、文末に「~, don’t you?」「~, isn’t it?」のような、念押しのフレーズがついた疑問文のことです。
肯定文の文末には否定形の念押しが、否定文の文末には肯定形の念押しがつきます。
【肯定文】
She’s absent today, isn’t she?
彼女は今日お休みですよね?
【否定文】
You don’t like coffee, do you?
コーヒーは嫌いですよね?
付加疑問文は構造上、最後まで音声を聞かないと疑問文だということがわからないため、注意しましょう。
なお、返答の方法は他の疑問文と同じで、
自分の答えが肯定の内容なら「Yes」、否定の内容なら「No」で応答します。
選択疑問文
選択疑問文とは、複数の選択肢のなかから、どれを選ぶかを尋ねる疑問文のことです。
例えば、以下のような質問文が流れたとします。
Which do you prefer, tea or coffee?
紅茶とコーヒー、どちらにしますか?
ここで、素直に紅茶かコーヒーを選んでくれれば簡単なのですが、どちらも選ばない以下のような回答が正解になるケースがよくあります。
Either is fine.
どちらでもいいです。
Let me think about it.
ちょっと考えさせてください。
I haven’t decided yet.
まだ決めていません。
Do you have any orange juice?
オレンジジュースはありますか?
「Whichで始まる質問だから、どちらか選ぶ選択肢が正解だな!」などと頭を固くせずに、
すべての返答をしっかり聞き取って、最適なものを選びましょう。
リアルなやりとりではありますが、問題としてはあまのじゃくだよね。
TOEIC Part2の回答手順
TOEICのPart2は、以下の基本の回答手順に沿って解きましょう。
【ステップ1】
ディレクションが始まったら、鉛筆をマークAの「上空3mm」にセットする。
【ステップ2】
質問文と選択肢Aを聞き、確実に正解だと思ったら、Aのマークシートにペン先を当てて、以降の選択肢を聞く。
Cまで聞いたうえで、Aで間違いなければ、そのままAのマークシートを塗りつぶす。
Aが不正解だと思えば、ペン先をマークB、Cの上空にずらしていき、正解が来たらペン先をマークに当て、すべての選択肢を聞いてから塗りつぶす。(Cの場合はそのまま塗りつぶす。)
重要なポイントは、「すべての選択肢を聞いてからマークをする」ということです。
Part2はとにかくサクサク進行していくので、一度マークをした後、「やっぱりこっちかも!」と消して塗りなおす、といった時間の余裕はほとんどありません。
【裏技】音声を聞き取れなかったときの対処法
TOEIC Part2で音声が上手く聞き取れなかったとしても、焦る必要はありません。Part2には、「不正解の選択肢あるある」が存在します。
聞き取れなかった場合の最終手段として、トラップ選択肢のよくあるパターンを押さえておきましょう。これだけでも、正答率はかなりアップしますよ。
「同じ単語」を含む選択肢は選ばない
質問文で使用されたのと同じ単語を含む選択肢は、ひっかけであることが多いです。
【例題】
Did you text Ms. Lee?
(A)Yes, I bought a text yesterday.
(B)Sure, you can take it.
(C)Susan did, I think.
「Leeさんにメッセージを送りましたか?」という質問文に対して、「なんかtextって聞こえたからAかな?」としてはいけません。
質問文の「text」は、「メッセージを送る」という意味で使われていますが、選択肢Aの「text」は、「教科書(= textbook)」という意味で使用されています。
文脈さえ理解できれば、まったく無関係な話をしていることがわかります。
正解は(C)「Susanさんがしたと思います。」です。
「類似発音の単語」を含む選択肢は選ばない
同じ単語を含む選択肢と同様に、「音が似ている単語を含む選択肢」にも注意が必要です。
【例題】
What time is the train coming?
(A)In 5 minutes.
(B)It’s likely to rain soon.
(C)She already had lunch.
質問文の「train(電車)」と選択肢Bの「rain(雨)」は、発音が似ているため、ひっかけ問題としてたびたび出題されます。
また、「What time~?」の返答は、「It’s~.」とするので、そこで二重に惑わされてしまう方もいるかもしれません。
たとえ質問文をすべて聞き取れなくても、文頭を聞き漏らさず、質問の趣旨(ここでは時間)を理解できれば、正解の(A)「5分後です。」が選べるはずです。
リスニング力が十分でないうちは、なかなか難しいところではありますが…
とりあえず「似た発音の選択肢は怪しいぞ!」ということは覚えておいて損はないでしょう。
念のため、TOEICでよく出題される類似発音の例も紹介しておきます。
coffee (コーヒー) | copy (コピー) |
floor (床) | flower (花) |
work (働く) | walk (歩く) |
hold (手に持つ) | fold (折りたたむ) |
car (車) | cart (カート) |
train (電車) | rain (雨) |
無関係な内容の選択肢は選ばない
当然のことですが、まったく関係のないことについての返答が、正解になることはありません。
例えば、「Which store is having a closing sale? (どちらの店が閉店セールを実施していますか?)」という問いに対して、
「What a beautiful sunset! (なんて美しい夕焼けでしょう!)」など、関連性がまったくない選択肢は即排除しましょう。
関連する単語を含む選択肢にも要注意
アナウンスの背景や意図を正しく読み取り、返答を適切にイメージすることは重要ですが、
勝手に連想や妄想を広げて、関連のある単語を含む選択肢を選ばないよう注意が必要です。
例えば、「How was your travel to New York? (ニューヨークへの出張はどうでしたか?)」という問いに対して、
「A Broadway musical. (ブロードウェイミュージカル)」など、象徴的な語から内容を連想させるようなトラップもあります。
「○○の話なら、きっと××が関係あるよね」といった選び方はやめましょう。
TOEIC Part2|スコアアップのコツ
TOEIC Part2では、以下のスコアアップのコツ3つを覚えておくとよいでしょう。
【最重要】冒頭は死んでも聞き逃さない
TOEICのPart2において、30%~50%強もの問題を占めるのは、「5W1H疑問文」の問題です。
このタイプの問題では、疑問詞さえ聞き取れれば、比較的簡単に正答を予測することができます。
しかし言い換えると、1秒でも集中力を切らして最初の疑問詞を聞き逃すと、即失点になるため注意が必要です。
Part2の問題文は非常に短いため、Part3やPart4のように、続きの英文からヒントが得られる可能性もありません。
万が一、集中力が切れて疑問詞を聞き逃してしまった場合には、その問題は捨てて適当にマークし、
気持ちを切り替えて次の問題に意識を集中させることが重要です。
目を閉じ、全神経を耳に集中させる
Part2では、集中力が点数を左右します。
「答えを選ぶ以前に、なかなか質問文が聞き取れない…」という初心者の方は、目をつむって、視覚情報を遮断すると、聞き取りの精度が少し上がるかもしれません。
なおこの方法は、問題用紙を一切見る必要がない、Part2のみで有効です。
5分類の消去法で回答する
回答手順の章でも触れましたが、正答率を上げるには、音声を最後まで聞いてからマークを塗ることが重要です。
さらに、音声を聞きながら各選択肢を以下の5つに分類することをおすすめします。
- 絶対これ!
- これかも?
- これは多分違う…
- 絶対違う!
- よく聞き取れなかった…
多くの方は、選択肢を「これかな」「違うかな」の2つに分けながら音声を聞いていると思います。
しかしその方法では、3問すべて「違うかな」となってしまったときに、打つ手がなくなります。
え、どれも違くない(汗)?っていう問題、結構あります。
そこで、確信のレベルに応じてより分類を細分化すれば、最も「それっぽい」選択肢を選ぶことが可能になります。
TOEIC Part2の勉強法
Part2対策において重要なのは、ひっかけ問題のパターンを正しく把握したうえで、短い音声をしっかりと聞き取るリスニング力を養うことです。
ここでは、TOEIC Part2の対策として有効な勉強法を3つ紹介します。
たくさん問題を解いてパターンに慣れる
Part2に限らずですが、やはりTOEIC対策は数をこなして「出題の癖」に慣れるのがスコアアップの近道といえます。
とにかくたくさんの問題を解いて、「自分が間違いやすい問題タイプ」や「聞き取れない音」を確認することから始めましょう。
ある程度問題を解くと、質問文を聞いただけで、ある程度選択肢を予想できるようになり、心理的負荷がかなり下がります。
質問文と選択肢を音読する
大量の問題を解くことは有効な対策ではありますが、答え合わせをするだけで終わってしまうのはいけません。
「一度引っかかったパターンには二度と引っかからない」という強い決意のもと、質問文と応答文をセットにして繰り返し音読しましょう。
音声を聞き取れずに失点となってしまった場合には、音声の再生スピードを下げて、ナレーターの発音を完コピできるまで音読してください。
質問文と選択肢をオーバーラッピングする
音読で表現を口に慣らしたら、最後はオーバーラッピングで仕上げましょう。
オーバーラッピングとは、スクリプトを見ながら流れてくる音声と同時に音読する学習法です。
リスニングで音声を聞き取れないのは、正しい発音を理解できておらず、自らその音を発声できないからです。
「発音できない音声は聞き取れない」ってやつです。
単語ごとの発音はもちろん、前置詞の音の弱化や、リエゾン(音の連結)、リダクション(音の脱落)など、音声変化も完璧に真似て、すべての音を自分のものにしましょう。
TOEIC Part2の勉強におすすめの問題集
最後に、TOEIC Part2の勉強におすすめの問題集を紹介します。
公式TOEIC Listening & Reading 問題集 9
前述のとおり、Part2は音声が短く、単純な構文しか出ないため、コツを押さえたうえで集中力を切らさずに臨めば、何も難しいことはありません。
本番同様のクオリティ、ナレーターの公式問題集をやり込み、しっかり復習する、という学習ルーティンを数セット繰り返せば、満点も夢ではないでしょう。
2023年3月現在、最新版は9(オレンジ)です。
ETS TOEIC 定期試験既出問題集
「公式問題集は一通り終わった」「リスニングセクション全体のスコアアップを目指したい」という方には、
ETS TOEIC 定期試験既出問題集(韓国の過去問)がおすすめです。
日本では未発売の「TOEICの過去問」で、10回分収録で3,450円という高コスパで対策ができます。(リスニングとリーディングは別冊)
ただし、解説はすべて韓国語なので、その点はご注意を。
2023年3月現在、最新版はリスニング、リーディングともにvol.3です。
TOEIC Part2 応答問題 でる600問
「Part2が特に苦手で、とにかく集中的に対策したい」という方には、『Part2 応答問題 でる600問』がおすすめです。
この問題集の最大の魅力は、タイプ別の練習問題(378問)と、模試10回分(250問)の、計628問収録のボリュームでしょう。
結構どっしりとした本ですが、628問をランダムに出題した別冊の小冊子『応答問題628問 ランダムチャレンジ!』も付属されているため、
これだけ持ち出せば外出先での学習もストレスなく進められます。
TOEIC パート1・2特急Ⅱ 出る問 難問240
「とにかくコスパよくPart1、2を対策したい」という方には、『パート1・2特急Ⅱ 出る問 難問240』が最適です。
おなじみの特急シリーズのPart1・2版で、基本的な問題から変化球の問題まで、過不足なく収録されています。
コンパクトなサイズで持ち運びしやすく、近年の難化傾向にもばっちり対応しています。
著者はTOEIC満点100回以上、YouTuberとしても大人気のもりてつ先生です。
TOEIC Part2はコツさえつかめば完封できる
TOEIC Part2は、質問文・応答文のいずれも非常に短いため、重要語を聞き逃してしまうと巻き返しが難しいトリッキーなパートです。
しかし、しっかり問題のパターンや傾向をつかめば、必ず満点を取れます。
万が一すべて聞き取れなかった場合も焦らず、今回紹介したコツを参考にして、少しずつ正答率を上げていくことから始めましょう!